Cingulate

Questions

現場からよくいただく問い

Questions

1on1や組織づくりについて、お客様から実際にいただく問いにお答えします。

Q11on1が雑談で終わってしまうのはなぜですか

A話すことが尽きているからではなく、1on1を業務確認の場と地続きにしているからです。

業務の進捗はふだんの報告で済んでいるため、1on1の場では話題が残りません。私たちは1on1を、進行中の業務を確認するパフォーマンスマネジメントの場ではなく、働き方やキャリアを聞き出すピープルマネジメントの場と考えています。マネージャーにとっては、話す場ではなく聞く場です。

そのうえで、雑談そのものは無駄ではありません。人が議論をするパターンには「情報共有」「課題解決」「課題発見」の3つがあり、雑談は3つ目の課題発見に強く効きます。まだ言葉になっていない問題は、議題を立てた会議からは出てきません。「ふと思ったんだけど」という一言から始まることのほうが多いのです。

分かれ目は、雑談が課題発見につながっているか、それとも情報共有の代わりに時間を埋めているかです。前者なら続けてよく、後者なら聞き方を変える必要があります。

Q21on1で何を話せばいいか分かりません

A話題を用意するのではなく、問いを用意します。

こちらから話題を出すと、その時点で場の主導権がマネージャーに移ります。かといって「何でも話していい」と丸投げすると、相手は何を話すべきか分かりません。あいだにあるのが問いかけです。

私たちは、メンバーが自分の型を確立するまでを「守破離」の3段階で捉えています。型を守る段階、型を破る段階、型から離れる段階で、投げかけるべき問いは変わります。最初から「どう思う?」と聞いても、型がない段階では答えようがありません。

実際に有効なのは、答えを誘導しない短い問いです。たとえば提案を受けたときに「これでいいの?」とだけ返す。選択と判断は本人に残したまま、視野だけを広げます。判断を任されると、人は事業そのものを理解しようとします。

Q31on1がうまくいっているか分かりません。何を見ればいいですか

A満足度ではなく、行動を見てください。

多くの企業が1on1の成否を満足度調査で測っています。しかし満足度は、1on1がうまくいっている証拠になりません。

私たちのデータでは、マネージャーがたくさん話し、メンバーはほとんど話していないにもかかわらず、メンバーが「有意義だった」と答えている組み合わせが一定数あります。 教えられることに満足してしまうメンバー側の問題と、教えること・成功体験を話すことに満足してしまうマネージャー側の問題が、同時に起きています。

この満足を良しとすると、過去の成功体験にしがみつくことを是とする文化ができあがりかねません。

測るのであれば、アンケート以外の評価を併用するか、アンケートであっても感想ではなく行動を聞いてください。あわせて、一定期間で区切って振り返る際には、話した内容ではなく、メンバーがどう行動し、そこで何に気づいたかに焦点を当てます。

Q4上司によって1on1の質に差があります。どうすれば揃いますか

A個人の資質の差として扱う前に、1on1をグループの会議と同じやり方で進めていないかを確かめてください。

職場のミーティングのうち約半数は1on1だと推定されていますが、研究の蓄積はグループミーティングに偏っており、その知見をそのまま1on1に当てはめることはできません。両者は、目的も、進め方も、満足度を左右する要因も異なります。

1on1の目的はコーチングやキャリアの相談といった個人的なものです。開始前の会話も個人的な内容になりやすく、その会話自体が関係の質に効きます。また、1on1では他の作業をしながらの参加は起きにくい一方、起きたときの害は大きく、マネージャーが目の前で携帯電話を触ると、部下の信頼・パフォーマンス・仕事の満足度がいずれも下がることが示されています。

満足度を高めるのは、個人に向けたフィードバックと、実施の頻度です。まずここを揃えるほうが、話し方の巧拙を揃えるより先に効きます。

Q5部下に、どこまで厳しく言っていいのか分かりません

A厳しさの度合いを調整するより、報告をどこまで求めるかを見直すほうが効きます。

報告・連絡・相談が回っていることは、マネジメントとしては正しい状態です。ただし新しい取り組みの場合、全員に「ちゃんと」報告して承認を取ってから進めることが、かえってリスクになります。必ず全員が賛同するとは限らず、説明を求められたり批判されたりして、芽のうちに潰れることがあるためです。

状況は適切な粒度で聞きつつ、個別の判断は任せる。1〜3か月の短期であれば指示したほうが早い場面もありますが、1年以上の時間軸で見ると、指示をせず本人の挑戦を待つほうが結果につながります。

もうひとつ、部下が報告しない背景も見ておく価値があります。「ちょうど今やろうと思っていました」という返答は、単なる言い訳ではありません。人を信頼して任せるとき、私たちは相手の「能力」と「意図」の両方に期待しています。あの返答は、その両方を相手に示すシグナルなのです。

Q6信頼と心理的安全性は何が違うのですか

A心理的安全性が危険をできるだけ取り除く方法であるのに対し、信頼は危険を承知で乗り越える方法です。

心理的安全性とは、その環境で安心して意見を言える状態を指します。ハードルを低くして、質問や意見が飛び交いやすくする考え方です。一方の信頼は、ハードルの高さを変えません。不安な状況でも相手に任せようと思える、その期待が信頼です。信頼される能力ではなく、相手を信頼する能力を指します。

どちらもコミュニケーションを活発にしますが、届く範囲が違います。心理的安全性の高い環境に慣れると、他部署や社外のようにハードルの高い環境で関係を築きにくくなります。イノベーションは既存の関係ではなく、新しい関係から生まれるため、心理的安全性だけでは届きにくいのです。

背景には、社会心理学者・山岸俊男氏による信頼と安心の区別があります。信頼は「社会的不確実性が存在しているにもかかわらず、相手の(自分に対する感情までも含めた意味での)人間性の故に、相手が自分に対してひどい行動はとらないだろうと考えること」、安心は「そもそもそのような社会的不確実性が存在していないと感じること」を意味します(山岸俊男『安心社会から信頼社会へ 日本型システムの行方』中公新書)。

心理的安全性は大切です。そのうえで、信頼も伸ばす必要があると考えています。

Q7若手が辞めているように見えますが、数字で確かめられていません

A離職率を追う前に、そもそも防ぐべき離職かどうかを切り分けてください。

離職は必ずしも防止すべきものではありません。優秀な人材が去った理由が上司にある場合、問題は離職ではなく、その上司が残っていることです。また、辞めないまま必要最低限の仕事だけを続ける「静かなる退職」もあります。離職を一律に抑えにいくと、やる気のある人の離職をかえって誘発することがあります。

そのうえで、離職の原因は給与よりも動機の欠如にあります。ハーズバーグの二要因理論では、満足度を上げる動機づけ要因と、不足すると不満を生む衛生要因は別のものです。衛生要因を満たしても積極性にはつながりません。数字で追うなら、離職率という結果ではなく、動機づけが効いているかを見るほうが早いのです。

注意点がひとつあります。主体性を高めること自体は組織のパフォーマンスに効きますが、会社と個人の向いている方向が違うと、主体性が高まった結果として退職に至ることがあります。 主体性を促すのであれば、同時にビジョンを共有し、方向を合わせておく必要があります。

Q8サーベイを取っても、その先どうすればいいか分かりません

A次の一手が見えないのは、測っている層がずれているからです。

組織を見る方法は、大きく3つの層に分かれます。個人の内面を見るミクロ、集団全体を見るマクロ、そしてその中間にあるメゾです。組織診断サーベイやアンケートはミクロの領域で、個人がどう感じたかに偏ります。チャットの分析などはマクロの領域で、目的を持たない集団を対象にしてきた手法です。どちらも、目的を持つ企業組織の状態を捉えるには少しずれています。

私たちが重要だと考えているのがメゾ、つまり個人と個人のつながりの層です。組織の成果は、個人の回答を足したり平均したりしても説明できません。

もうひとつ、自己申告データそのものにも限界があります。私たちの調査では、「話す時間が長いか、聞く時間が長いか」という会話スタイルで35.5%、「動き回るか、特定の場所にいるか」という行動スタイルで43.1%が、自己認識と実際の行動が一致していませんでした。 誤った認識にもとづく回答から施策を立てても、狙ったところに当たりません。

サーベイの回答に加えて、1on1や会議での実際のやりとりのようなコミュニケーション・データを併せて見る。ここが次の一手になります。

Q9効果を社内でどう説明すればいいですか

A「信頼が高まれば業績が上がる」とは言い切らず、効果が確かめられている範囲から説明することをお勧めします。

私たちは2024年1月より、大阪大学大学院 経済学研究科 松井博史研究室と共同研究を行っており、組織における信頼の効果を学術研究にもとづいて整理したレポートを公開しています。

そこで確認されているのは、次のような内容です。信頼の効果のうち、①従業員満足度などの上昇、②組織の状態や経営陣の取り組みを受け入れる認知面の変化、③チーム内の対立の減少については、検討された研究の多くで効果が認められ、効果量も一定以上でした。

一方で、個人や組織の業績そのものへの効果は、測定した内容や対象組織の性質によって結果が分かれます。ここを断定しないことが、かえって社内の説明では通りやすいと考えています。

そのうえで、信頼は業績に直接効くだけでなく、メンバーの主体性の向上や、経営層の取り組みを受け入れる姿勢といった、他の施策が効くための前提をつくります。変化の速い環境ほど、この前提の重要性は増します。